2019年はロマン派音楽を代表するドイツ作曲家フェリックス・メンデルスゾーンの生誕210周年。
そして明日(2月3日)はなんとメンデルスゾーンの誕生日です!
主に交響曲『イタリア』、『無言歌』、『ロンド・カプリッチョーソ』に代表されるピアノ曲、ヴァイオリン協奏曲で知られるメンデルスゾーンは豊かな教養と才能に恵まれ、R・シューマンに「19世紀のモーツァルト」と言わしめたほどの伝説的天才芸術家でした。
しかしながら、上記以外の曲に関心や注意が集まることはなく、現代の音楽界においてもワーグナーやシュトラウス、ブラームスなどの大きな影響力ゆえ、日陰に晒された感も否めないのも事実です。
そのほか、
・「メンデルスゾーンは生涯において幸福で、苦難がなかった」
・「メンデルゾーンはいつも裕福だった」
・「メンデルスゾーンは穏やかな気質だった」
・「メンデルスゾーンの音楽には深みがない」
・「メンデルスゾーンは生前ユダヤ人として迫害を受けた」
というような印象をもつ人たちが多く、学校教育での教科書や一般的な文献においても戦後以降もこれが概ね通説となっているようです。
しかし近年、研究家の間では、未公開だった資料や作品などが少しずつ発見されるようになって、従来の評価が見直され始めているほか、これまで事実と思われていたこととは違ったことが判明してきました(例えば、38歳と若くして亡くなったメンデルスゾーンの死因は「過労」や「ストレス」によるものと言われていましたが、最近の医学的研究によるとメンデルスゾーンは生まれつき脳に腫瘍があり、それが晩年になって彼を死に至らしめたという研究結果が明らかになっています)。
私自身もメンデルスゾーンに関して多数の資料を集め、数年前に論文も書いていますが、メンデルスゾーンの評価は一概に言って正直それほど簡単なものではありません。
まだまだ残された謎は多く、人格、信条、好き嫌い、家庭環境、社交関係、作曲家だけでなく演奏家や指導者としての評判などの観点から多角的に考察していく必要があり、現状を見る限りでは、残念ながら多くの人にとってはまだメンデルスゾーンの生涯について詳しいことはあまり知られていないといえるでしょう。
生誕210年となった2019年を通してこのブログで、なぜメンデルスゾーンの作品が他の作曲家の作品に比べて頻繁に演奏されないのか、どのような経緯でそうなったのか、上記のような世間のメンデルスゾーンに対する考え方は果たして正しいのかという問いに触れながら、捻じ曲げられた事実や誤解を解き、交友関係のあった人物や批評家らの証言などを基に、メンデルスゾーンの知られざる数々の秘密に迫っていきたいと思います。